三木ェ門は呆然と起き上がった。
見慣れた障子にうつる柱の影は弱々しく、夏も近いこの時期、起床にはまだ早い刻限であることを知らせている。
たしかにこの手に触れていたのに、と目を落とせば黒々と闇があるばかり。
目を擦ろうとして、自分が泣いていることに気付いた。気付いてしまえばあとからあとから涙はあふれ出て、頬に冷えた二条の跡をつけた。
同室の友を起こさぬよう、三木ェ門はひざに顔を埋めて、静かに嗚咽した。
思いつつ寝らばや人の見えつらむ
夢と知りせば覚めざらましを
(愛しい人のことを思いながら寝たので、夢に現われたのでしょう。夢と知っていたら、目覚めたりなぞしなかったのに!)
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