食満留三郎の場合



「だーいせいこう」

「…このくそったれ」

「それはもう聞きました」

 いつもなら助ける立場の自分が、何でよりにもよって穴にはまってこいつに見下ろされているのか。食満留三郎の口から悪態が出るのも無理からぬ話。
 張本人の綾部はひょうひょうと縁から顔をのぞかせている。

「考えたんですけど、善法寺先輩を探してるときの先輩なら、割と必死だからいけるかもしれないって。だから善法寺先輩を落とした穴の周りにたくさん掘ってみました」

「何だそれ…って、そうだ伊作…!」

   当初の目的を思い出すと、こうしてはいられないのだった。危うく忘れていたけれど。




 忘れるなよ。


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